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Posted by LOGPORT運営事務局 at

2015年12月10日

相伴に預かっても


ほら今月の小遣いだ無駄遣いするんじゃねえぞ、と毎月の決まり文句を言いながら小五郎から数千円を受け取った。
無駄遣いしてるのはどっちだというつっこみは内心に留めておく。
その代わりコナンはよい子の顔をして「はーい」と通る声で返事をした。

一応の立場上澳門自由行、毎月の小遣いは家主の小五郎からもらっている。
小五郎はコナンの「親」から預かった通帳からその金額を出している。
小学一年生からしたらやや高値の金額だったが、小五郎もそこについては何も言わなかった。
「親」からこの金額分を毎月渡してやってください、と言われてるからだ。

「今日は俺も仕事で蘭は合宿だからな、早目に帰るがあまりちょろちょろ遠いところまで行くんじゃないぞ」
「うんわかった」

多分今夜は行きつけのラー鑽石水メン屋で二人で醤油ラーメンでもすすることになるだろう。
コナンは娘によってアイロンのかけられたスーツを羽織り出ていく小五郎を見送る。

扉が閉まれば探偵事務所は静まり返る。
さて今日はどうしたものか。
そういえば図工の宿題があったと思いだす。
算数や国語と違い、図工は頭脳が高校生だったとしてもそれなりの時間がかかる。
昼まではそれをするかと決める。

家主と兼任の自室から画用紙とクーピーを持ち出し、事務所の机に広げる。
別に自室でやっても良かったのだが、コナンは何となくこの事務所が好きだった。
ヤニ臭さと多少の酒の匂いが残るのは頂けないが、仕事用の書類や資料が詰まれた大きなラックや、蘭が客用に用意してあるティーセットが並ぶ

食器棚に囲まれる小さな空間がコナンとって唯一無二の場所だった。

冷蔵庫からレモンを二つほど取って来て机に置く。
宿題は自分の好きな果物を描いてくること。
ちょうど紅茶用に蘭がレモンを常備していたということもあるし、元々レモンは好きな部類に入る。
描きやすいし。
後者の理由が一番大きいかと思われるが、コナンはちょこんとソファに座り膝に画板と画用紙を載せて大人しく描き始めた。
この姿になってから、当時は何とも思わなかった図工が割と好きになっていた。
加減も気にせず手がけても問題ないからだ。

遠くのほうで正午を報せるベルの音がする。
集中して画用紙に描き込んでいたコナンは顔を上げる。
もう一時間くらい経っていたかと背伸びをした。
期末試験と大会間近で多忙な蘭は朝ごはんは作ってくれたが、昼ごはんは冷蔵庫の残り物でお願いと言いながら慌てて今朝出て行った。
確か依頼人からもらった高級缶詰のおかずがあったはず。
小五郎が夜な夜なそれを肴に晩酌しているが、一つくらいご相伴に預かっても良いだろう。
小学生にしては渋い興味であるが舌の肥えた実質高校生のコナンは、こっそり気になっていた缶詰と白ご飯で昼食にしようと立ち上がった。
その時訪問を告げるチャイムが鳴る。
何となく嫌な予感がする。
そういう直感は割と当たるコナンは少し眉をひそめたが、居留守を装う理由も無く、恐る恐る扉を開けた。
開けた先に居た人物を見上げ、コナンは嗚呼やっぱり居留守にしておいたほうが良かったと後悔した。

  


Posted by のぬね at 12:41Comments(0)kisssi